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[2014/12/09]

歌の力③ 入院先から帰りたいと深夜の電話 健康・医学

認知症 89 歳の母との日々

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  • 連載コラム

母が吐血し、入院してから1週間。治療が功を奏し、集中治療室から一般病棟の1人部屋に移されました。面会に行くと、車いすに座り、腰を固定されています。しおれた花のように、ぼんやりとうなだれているのです。そしてかすれた声で「来てくれてうれしい」と言うものの、元気はありません。ここがどこかも分からない様子で、天気がいいのに「外は雨なの?」と聞いたりしていました。

■メッセージの効果なく
数日後には4人部屋に移動。毎日面会に通う私と妹に「今日一緒に帰る。歩けるから!」と言い、ベッドから立ち上がろうとします。周りの様子は漠然としか分かっていない様子でした。
当時は点滴をしていて、退院できる状態ではないころでしたから、 「お母さんは吐血して救急車で運ばれ、 入院している。もうしばらくこの病院で治療し、回復したら家に帰れるから、それまで頑張ってね」とスケッチブックに大きな字でメッセージを書き、ベッドから見えるように置いてきました。
しかし、その夜遅く、家に夜勤の看護師さんからの電話が。 「メッセージの効果はほとんどありませんでしたよ。家に帰ると強く言われるのですが、説明しても分からないので、娘さんから電話で言い聞かせてください」と。
ナースステーションで、駄々っ子のように「帰りたい、帰りたい」と訴えている母の姿を想像して、本当にかわいそうに思いました。

編集委員橋本園子